Drupal Coreの歴史~バージョン1から11まで20年以上の進化をたどる~

Drupalの歴史
目次

はじめに

Drupal(ドルーパル)」という名前を聞いたことがあるでしょうか。WordPressと並ぶ世界的に有名なオープンソースCMSであり、政府機関・大学・メディア企業など、世界中の重要なWebサイトを支えているプラットフォームです。

Drupalは2001年に誕生して以来、20年以上にわたって進化を続けてきました。バージョンを重ねるごとに機能が拡充され、アーキテクチャが刷新され、そして最新の「Drupal CMS(Starshot)」へとつながる歴史を歩んできました。

本記事では、Drupal Coreの歴史をバージョンごとに振り返り、その進化の軌跡を詳しく解説します。Drupalの過去を知ることは、現在の機能や設計思想を深く理解することにもつながります。ぜひ最後までお読みください。

1. Drupalの誕生:Dries Buytaertとその原点(2001年)

Drupalの歴史は、ベルギー出身の学生エンジニア、Dries Buytaert(ドリース・ボイタールト)氏の小さなプロジェクトから始まりました。1999年、Dries氏はアントワープ大学の学生寮でルームメイトたちとコミュニケーションするためのシンプルな掲示板システムを開発しました。

このシステムを2001年にオープンソースとして公開した際、ドメイン名に「dorp(オランダ語で"村"の意味)」と名付けようとしましたが、誤って「drop(ドロップ)」と入力してしまったのが「Drupal」という名前の由来です。これがDrupalの第一歩でした。

当初のDrupalは非常にシンプルなもので、ニュース投稿・コメント・ユーザー管理といった基本的な機能しか持っていませんでした。しかし、オープンソースとして公開されたことで世界中の開発者が参加するようになり、急速に成長していきます。

2. Drupal 4系:コミュニティの形成と基礎の確立(2002〜2005年)

Drupal 4.0〜4.7の概要

2002年にリリースされたDrupal 4.0は、初めて体系的なモジュールシステムを導入したバージョンです。このモジュールシステムこそが、後のDrupalの拡張性の礎となる重要な設計です。テーマシステムも整備され、デザインと機能を分離するという現代CMSの基本思想がここに根付きました。

続くDrupal 4.1〜4.4では、ユーザー権限管理(ロール・パーミッション)の強化、多言語サポートの初期実装、そして分類体系(タクソノミー)機能の原型となる仕組みが追加されました。

Drupal 4.5・4.6では、インストールプロファイルが導入され、用途に応じたDrupalのセットアップが可能になりました。この考え方は、後の「ディストリビューション」や「レシピ」システムへとつながっていきます。

2006年にリリースされたDrupal 4.7は、フォームAPI(Form API)を正式に導入した重要なバージョンです。フォームの生成・検証・送信処理を統一的に扱う仕組みが整備され、開発者にとって大きなメリットをもたらしました。また、この頃からDrupalのコミュニティは急速に拡大し、世界中から貢献者が集まるようになりました。

3. Drupal 5・6:普及期の到来と成熟(2007〜2010年)

Drupal 5(2007年)

2007年にリリースされたDrupal 5は、管理画面のユーザビリティが大幅に改善されたバージョンです。モジュールの管理インターフェースが刷新され、一般ユーザーでも扱いやすい設計になりました。また、テーマエンジンが強化され、PHPTemplateが標準テーマエンジンとして採用されました。

この時期、Drupalは単なる掲示板システムから本格的なCMS・CMF(コンテンツ管理フレームワーク)へと進化し、政府機関や大学などの組織でも採用が始まりました。

Drupal 6(2008年)

2008年にリリースされたDrupal 6は、多くの点で飛躍的な進化を遂げたバージョンです。主な改善点は以下のとおりです。

  • CCK(Content Construction Kit)の統合に向けた準備:カスタムフィールドをコンテンツタイプに追加できる機能の基盤整備
  • 国際化(i18n)機能の大幅強化:多言語サイト構築がより容易に
  • OpenID対応:当時注目されていた分散認証技術を早期採用
  • テーマシステムの強化:より柔軟なデザインカスタマイズが可能に

Drupal 6の時代には、Drupalを採用するサイトが世界中で急増し、ホワイトハウス公式サイト(whitehouse.gov)がDrupalを採用したことで大きな話題となりました。これはDrupalの信頼性と実力を世界に示す出来事でした。

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whitehouse(2009年)

4. Drupal 7:黄金期の到来(2011年)

2011年1月にリリースされたDrupal 7は、Drupalの歴史の中でも最も長く愛用されたバージョンの一つです。リリースから長年にわたり多くのサイトで稼働し続け、Drupalの「黄金期」を支えました。

Drupal 7の主要な新機能

フィールドシステムの標準統合
従来はContrib(コントリビュート)モジュールとして別途インストールが必要だったCCK(Content Construction Kit)の機能が、Drupal Coreに統合されました。これにより、コンテンツタイプにカスタムフィールドを追加する操作が標準機能として利用できるようになり、柔軟なコンテンツ設計が容易になりました。

管理画面(Adminインターフェース)の刷新
新しい管理テーマ「Seven」が採用され、それまでに比べて格段に使いやすい管理画面が実現しました。ショートカットバーやオーバーレイ表示など、モダンなUI要素が取り込まれました。

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Seven管理画面

エンティティシステムの導入
ノード(記事)だけでなく、ユーザー・タクソノミー・コメントなどあらゆるデータを「エンティティ」として統一的に扱う設計が導入されました。これが後のDrupal 8以降のアーキテクチャ革新につながる重要な概念です。

RDFa対応
セマンティックWebへの対応として、RDFaマークアップをサポートしました。これはSEOにも有効な施策として注目されました。

Drupal 7の社会的影響

Drupal 7の時代には、米国政府の多くの省庁・機関が「Drupal採用事例」として公表されるなど、エンタープライズ・パブリックセクターにおけるDrupalのデファクトスタンダード化が進みました。また、The Economist、MIT、NASAなど世界の名立たる組織がDrupalを採用したことで、CMSとしての信頼性が確固たるものとなりました。

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様々な大規模サイト

5. Drupal 8:アーキテクチャの大転換(2015年)

2015年11月にリリースされたDrupal 8は、Drupalの歴史において最も大きなアーキテクチャの変革をもたらしたバージョンです。「これまでのDrupalとは別物」とも言われるほど、内部構造が根本から刷新されました。

Symfonyフレームワークの採用

Drupal 8の最大の変化は、PHPフレームワーク「Symfony」のコンポーネントをCoreに取り込んだことです。それまでのDrupalは独自のフレームワークを持っていましたが、Drupal 8ではSymfonyのHTTPKernel・Routing・DependencyInjectionなどのコンポーネントを採用。これにより、Drupalは一般的なPHPフレームワークとの親和性を高め、現代的なソフトウェアエンジニアリングのベストプラクティスに沿ったCMSへと生まれ変わりました。

Drupal 8の主要な新機能・改善点

  • 設定管理システム(Configuration Management):サイト設定をYAMLファイルで管理し、開発・ステージング・本番環境間での設定同期が可能に
  • RESTful Web Services:コアレベルでREST APIを提供し、ヘッドレスCMSとしての利用が可能に
  • Twig テンプレートエンジン:PHPTemplateに代わり、セキュアで記述しやすいTwigをテンプレートエンジンとして採用
  • モバイルファースト設計:管理画面を含めレスポンシブデザインに完全対応
  • WYSIWYG エディタの標準搭載:CKEditorをコアに統合し、リッチテキスト編集が標準機能に
  • 多言語機能の大幅強化:4つの言語関連モジュール(Language, Content Translation, Interface Translation, Configuration Translation)を標準搭載

「APIファースト」という設計思想

Drupal 8から打ち出された「APIファースト」の思想は、Drupalをただのサイト構築ツールから、コンテンツを様々なデバイスやチャネルに配信するための「コンテンツプラットフォーム」として再定義するものでした。この考え方は、現在のヘッドレスCMSやデカップルドDrupalの潮流の先駆けとなりました。

6. Drupal 9・10:継続的進化と近代化(2020〜2022年)

Drupal 9(2020年)

2020年6月にリリースされたDrupal 9は、Drupal 8から大きなアーキテクチャの変更はなく、むしろ「クリーンアップ」と「依存ライブラリの更新」に重点を置いたバージョンです。

主な変更点として、Drupal 8で廃止予定(deprecated)とされていたAPIや関数が完全に削除され、コードベースがすっきりと整理されました。また、依存するSymfonyのバージョンがSymfony 4/5に更新され、CKEditorも最新版に追従しました。

重要な点は、Drupal 8からDrupal 9へのアップグレードが非常にスムーズだったことです。これは従来のメジャーバージョンアップで大きな互換性の問題が生じていたことへの反省から、「アップグレードが容易なDrupal」を目指した開発方針の成果でした。

Drupal 10(2022年)

2022年12月にリリースされたDrupal 10は、より現代的なユーザーエクスペリエンスの提供を目指したバージョンです。

  • CKEditor 5への完全移行:より直感的でモダンなリッチテキスト編集体験を提供
  • Claro管理テーマの標準化:アクセシビリティに配慮したクリーンな管理画面デザイン
  • Olivero フロントエンドテーマの標準搭載:美しくモダンなデフォルトテーマ
  • Symfony 6・PHP 8.1対応:最新の技術スタックへの追従
  • StarterKit テーマジェネレーター:カスタムテーマ作成の効率化

Drupal 10では、古くなったコード(jQuery UIなど)の削除が進み、より軽量でセキュアなコアへと整備されました。

7. Drupal 11:最新世代へ(2024年)

2024年にリリースされたDrupal 11は、PHP 8.3/8.4・Symfony 7への対応など最新技術スタックへの追従を図りながら、開発者体験(DX)とコンテンツ編集者体験(EX)の両面で大幅な改善が行われました。

Drupal 11の主な特徴

  • Experience Builder(実験的機能):ノーコードでのページ構築をサポートする次世代のレイアウト編集ツール
  • レシピ(Recipes)システム:特定用途のサイト構成をワンコマンドで適用できる革新的な仕組み
  • Project Browserのコア統合:モジュール・テーマの検索・インストールを管理画面から直接実行可能に
  • Automatic Updatesの強化:セキュリティアップデートの自動適用をより簡単に実現
  • Starterkit テーマの改善:カスタムテーマ開発のワークフローがさらに効率化

Drupal 11は、開発者だけでなくコンテンツ編集者や非エンジニアにも優しいDrupalを目指す流れを加速させた重要なバージョンです。

8. Drupal CMSの誕生:Starshotプロジェクト(2024〜現在)

Drupal 11と並行して進んでいる大きなプロジェクトが、「Drupal CMS」(コードネーム:Starshot)です。2024年にDries Buytaert氏が発表したこのプロジェクトは、Drupalの「使いにくさ」という長年の課題を根本から解決しようとする取り組みです。

Drupal CMSは、Drupal Coreをベースにしながら、以下のような特徴を持っています。

  • プリインストールされた必須機能:コンテンツ管理・メディア管理・SEOツールなどが最初から利用可能
  • レシピシステムによる高速構築:ブログ・コーポレートサイト・ECサイトなど用途別のレシピで即座にサイトを構築
  • DDEVによる簡単なローカル環境構築:数コマンドで開発環境を整備
  • 直感的な管理画面:技術的な知識がなくても扱えるUI設計

Drupal CMSの誕生は、20年以上の歴史の中で培われたDrupalの技術力と、常に進化し続けるコミュニティの力が結実した結果と言えるでしょう。

9. Drupalを支えるコミュニティの歴史

Drupalの歴史を語るうえで欠かせないのが、世界中の貢献者によって支えられたオープンソースコミュニティの存在です。

現在、Drupalには世界100カ国以上から100万人を超えるコミュニティメンバーが参加しており、毎年「DrupalCon」と呼ばれる大規模カンファレンスが北米・ヨーロッパ・アジアなどで開催されています。日本でも「Drupal Camp」が定期的に開催され、国内のDrupalユーザーや開発者が情報交換を行っています。

Drupal camp tokyoが2026年6月27日(土)に開催予定です。

コミュニティ主導の開発という性質上、Drupalはビジネスの論理だけでなく、実際の現場ニーズに即した形で進化してきました。各バージョンの機能改善の多くは、世界中の開発者・コンテンツエディター・サイトオーナーからのフィードバックによって形作られています。

10. Drupal Coreのバージョン別主要変更点まとめ

これまでの歴史を整理すると、以下のようになります。

バージョン リリース年 主な特徴・変更点
Drupal 1 2001年 掲示板システムとしてオープンソース公開
Drupal 4系 2002〜2006年 モジュールシステム・テーマシステム・フォームAPIの確立
Drupal 5 2007年 管理画面の改善・PHPTemplateの採用
Drupal 6 2008年 国際化強化・OpenID対応
Drupal 7 2011年 フィールドシステム統合・エンティティ概念の導入
Drupal 8 2015年 Symfony採用・REST API・Twig・設定管理システム
Drupal 9 2020年 コードクリーンアップ・スムーズなアップグレードパス
Drupal 10 2022年 CKEditor 5・Claro/Oliveroテーマ・Symfony 6対応
Drupal 11 2024年 Experience Builder・レシピシステム・Project Browser統合
Drupal CMS 2024年〜 Starshotプロジェクト・初心者向け・レシピ・DDEV統合

まとめ

Drupal Coreは、2001年の一人の学生の掲示板プロジェクトとして始まり、20年以上の時間をかけて世界最高水準のCMSへと進化してきました。各バージョンごとに時代のニーズに応じた革新を重ね、技術的な先進性とコミュニティの力を武器に成長し続けてきたその歴史は、オープンソースソフトウェアの理想的な姿とも言えます。

特にDrupal 8でのSymfony採用によるアーキテクチャ刷新は、Drupalを単なるCMSからコンテンツプラットフォームへと変革する転換点となりました。そして今、Drupal CMSという形で「誰もが使いやすいDrupal」が目指されており、次の時代に向けた新たな歴史が始まっています。

Drupalの歴史を振り返ることは、現在の機能や設計思想がなぜそうなっているのかを理解するための重要な手がかりです。これからDrupalを学ぶ方も、すでに使いこなしている方も、ぜひこの歴史を頭に入れながらDrupalと向き合ってみてください。

Drupal CMSの最新情報や詳しい使い方については、当メディアサイト「Drupal CMS Lab」でも随時発信していきます。引き続きよろしくお願いします!

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